日本語で「おもう」という言葉を漢字で表すとき、「思う」と「想う」の2つの表記が存在します。一般的には「思う」が頻繁に使用され、特に感情が深く関わる場合には「想う」が選ばれることが多いです。これらの漢字を構成する部分を見ると、使い分けの背景が理解できます。
「思う」の漢字「思」は、「田」と「心」から成り立ち、幼児の頭の形と心臓の形を表しています。これは、頭で考えたり心で感じたりすることを象徴しています。
一方、「想う」に使われる「想」は、「相」と「心」の組み合わせで、木を見ることを表す「相」と心を意味する「心」が含まれています。これは、頭で考えるのではなく、心で物事を観察しイメージすることを示し、より感情豊かな表現に適しているとされています。
例えば、「相手を思う」という表現は通常の意味合いですが、「相手を想う」という表現は、相手の姿や性格を心に描き、より強い感情を伝えることができます。同様に、「思い出」と「想い出」にも違いがあり、「想い出」はより深い情感が含まれていると感じられます。
普段は「思う」を使い、感情を強く表現したい場合は「想う」を使います。さらに、「おもう」には「念う」「懐う」「憶う」「惟う」といった他の漢字表記もあり、それぞれ異なるニュアンスを持っています。「念う」は強い思いを表し、「懐う」は深い感情を、「憶う」は記憶に留めることを、「惟う」は深く考えることを意味します。